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歴史ある谷町六丁目に住むことの魅力


大阪には珍しく、古い町並みが残っているのが谷町六丁目あたりです。かと思うと、この雰囲気にあこがれて繁華街からお店を移してくる人、ここを選んで新くお店を持つ人も増えています。谷町六丁目は「古い雰囲気と新しくておしゃれな雰囲気の両方が静かに溶け合っている街」へと今も成長中です。

おそらくは築200年の建物内で営業するエクチュア からほり「蔵」本店。御屋敷再生複合ショップ 「練 -Len-」の中で営業するチョコレート専門店だ。

谷町六丁目の位置

行政上の「谷町六丁目」は東西約400メートル、南北300メートル弱の長方形の範囲です。南北に走る「谷町筋」のもう1本東側の通りと東西に走る「長堀通」との交差点を北東の角とし、「空堀(からほり)商店街」がほぼ南側の境界線になっています。
ただ、「谷町六丁目」、あるいは略して「谷六(たにろく)」と呼ぶ場合、谷町筋・長堀通の交差点あたりを中心にして半径500メートルほどの範囲を指すことが一般的には多いようです。もちろん、これは「地下鉄の谷町六丁目の駅周辺」という意味です。

戦前からの古い町並みが残る

谷町六丁目が紹介されるときの定番の説明が「空襲にも焼け残った」です。それがどれほど珍しいことなのかを理解するには、まずは「大阪大空襲」を知っておく必要があるでしょう。

大阪大空襲とは

第二次大戦中、大阪にも当然、米軍機による攻撃がありました。
始まったのは大戦終盤の1944(昭和19)年12月です。以来、翌年8月15日までに大阪府全体では合計50回ほどの空襲を受けました。死者・行方不明者は約15,000人とされます。
中でも100機以上もの爆撃機が襲来した8回については、「大阪大空襲」と呼ばれます。1945(昭和20)年3月13日深夜から14日未明にかけてのもこの8回の中でも最大で、死者は4,000人、被災者は50万人と考えられています。

古い町並みが人を集め始めた

何度も降り注いだ焼夷弾のせいで、大阪市内では焼け残ったところはほとんどありません。あっても、所々のごく狭い範囲が点在している程度です。例外的にまとまって焼け残ったのが谷町六丁目あたりと、JR大阪駅から徒歩10分ほどのところにある中崎(北区西中崎)でした。
ここ4、5年の間にもキタやミナミの飲食店やファッション関係のお店がいくつもこの谷町六丁目に移ってきたり、新しくそういったお店を始める人も増えたりしました。ここを選ぶ理由は、「都会の中にありながら、ゆったりとした空気が流れている」「古くからの住人がいる。おじいちゃん・おばあちゃんとの交流も楽しそう」などのようです。
そうなると、今度はこれらのおしゃれなお店を目当てに訪れる人も増え、どんどんとにぎわいが増しています。

空堀商店街近くの築八〇年の建物。2019年3月までは欧風家庭料理の店として使われていた。惜しまれながらも閉店したが、その後も飲食店として使われている。

谷町六丁目の象徴・「空堀商店街」

この谷町六丁目の代名詞ともいえるのが「空堀(からほり)商店街」です。南北800メートルものアーケードがあって、飲食店・八百屋・魚屋・豆腐屋などが並んでいます。「わりと普通の商店街」と呼ぶ人もいないわけではありません。しかし、「かつては普通だったかもしれないが、今ではもう見かけることのなくなった商店街」と考えたほうがいいのではないでしょうか。
このレトロな風景を目当てに、映画『プリンセス・トヨトミ』(2011年)でも主要なロケ地のひとつに選ばれました。
名前の由来になっているのは、かつてここにあった空堀(水のない堀)です。「大坂城南惣構堀(みなみそうがまえぼり)」といい、大阪城(大坂城)の外堀のひとつでしたが、「大坂冬の陣」の後に埋められました。お店が集まりだしたのは大正時代で、戦前にはすでに商店街になっていました。

おしゃれな谷六のお店をピックアップ

古い町並みの中に溶け込んでいるおしゃれなお店をいくつかピックアップしてみましょう。

あと少しで取り壊されそうになっていたものの、結局リノベーションされて複合ショップとなり、今は10店が営業している。

「惣(そう)」

古い建物をリノベーションして、カフェにしたりブティックにしたりするのは戦前から焼け残った空堀商店街かいわいだからこそできることです。
2002(平成14)年のオープンと、これらの中でもかなり早い時期に始まったのが、長屋再生複合ショップの「惣(そう)」です。もとは100年以上も前の1913(大正2)年に建てられた2連長屋です。場所は空堀商店街から少し南に入ったところにあります。
その当時でも90年近くたっていて雨漏りもひどく、家の持ち主は壊して駐車場にでもするつもりだったそうです。それをたまたま建築家が聞きつけ、「もったいない。リノベーションしてお店などに貸すことはできないか」と掛け合って残されました。名前の「惣」とはかつて大阪にあった町衆の自治組織のことです。
今はカフェ、美容室、すし屋など10店舗が営業しています。

「惣」のオープン当初から営業している雑貨カフェの「クーデリーカフェ」

「練 -Len-」

「惣」とは空堀商店街を挟んで逆の北側には、御屋敷再生複合ショップ 「練 -Len-」もあります。こちらはかなり大きなお屋敷がリノベーションされました。現在地に建ったのは大正の末ですが、この建物を管理する株式会社京利は、「母屋はおそらくはもとは別の場所にあって、そのときに移築されてきたらしい。おそらくは、200年も前に建ったものではないか」としています。
リノベーションされ、複合商業施設となったのは、2003(平成15)年です。その9年後には母屋・蔵・表門が国の「登録有形文化財」に登録され、建物の貴重さが再認識されました。
現在、カフェ、ネイル・エステ、アクセサリー店、レンタサイクル店など15店舗が営業しています。

お屋敷としての門構えをそのまま残してリノベーションされた御屋敷再生複合ショップ 「練 -Len-」

美容室「coya+LIM コヤプラスリム」

2017年1月に心斎橋から移ってきたのがヘアサロンの「coya+LIM コヤプラスリム」です。長堀通と谷町筋の交差点からはやや東寄りの北側で、目の前は公園、周囲にはマンションも立ち並ぶところにあります。
スタイリストでオーナーの堀内英介さんは、「ゆったりとした空間の中にお店を持ちたかったんです。今のお店は古くて長屋になっていた家を改装しました。イメージは『都会の中の山小屋』です」。その言葉通り、壁や柱には木目を生かした材木が多用されています。鉢植えの緑やドライフラワーも「所狭し」といった具合に飾られています。壁には小鳥用の巣箱まであります。
「この3年弱だけでも、ファッション関係の仕事をしているなどおしゃれで若い女性も増えてきました。『このあたりは絶対にこれから伸びる場所だ』と判断したのが当たりました。一方で、お客さんには昔から住んでいる人も多く、上は92歳の方からいます。そういう方と話をしながらの仕事も楽しいですよ」

「落ち着いた環境でお店をやりたかった」と心斎橋から移転してきた美容室「coya+LIM コヤプラスリム」。お店は山小屋を意識して作られた。

ホットドッグ&コーヒースタンド「FAT DOG STAND」

少し話している間にも、つえをついた年配の女性が目の前を通り、「こんにちは」と向こうから声をかけてもらっているのが、ホットドッグ&コーヒースタンドの「FAT DOG STAND」です。マスターの佐竹拓哉さんが31歳なので、その年の差は50年ほどでしょうか。
場所は空堀商店街の中ほどにあります。先程の「coya+LIM コヤプラスリム」とほぼ同時期にオープンしました。
イートインはなく、持ち帰りになるか、すぐに食べるのならば店内ならばスタンド(立ったまま)で食べるか、お店の前のベンチに座るかだけです。「ちょっと年配の人にはなじめないかなぁ」といったところですが、「いや、年配のお客さんも多いですよ」。それが本当なのは、先程のご近所の方とのやり取りからも納得です。

「FAT DOG STAND」とマスターの佐竹拓哉さん。お店ができて3年ほどだが、どうやらすでに空堀商店街の人気者らしい。

谷町六丁目に住む

谷町六丁目はよそからの転居にも有力な選択肢のひとつで、その理由はたくさんあります。

生活に便利

空堀商店街は買い物や食事に便利です。ショッピングセンターといえる規模のものはないものの、日常の生活品を買う程度のスーパーマーケットならば決して少なくありません。「八百屋さんや魚屋さんでのお買い物は一軒一軒回ることになり、大変そう」といった人にも問題はないでしょう。コンビニも一歩大通りに出さえすればたくさんあります。
緑が多く散策にも適した大阪城や難波宮跡公園も徒歩で行ける範囲なので、休日の過ごし方のバリエーションに加えていはいかがでしょうか。
ここからの他地域への交通の便も最高です。谷町線と長堀鶴見緑地線のふたつの地下鉄が交差しているので、東梅田、天王寺、心斎橋などへ乗り換えなしで行けます。

マンションは北側に多い

行政上の谷町六丁目は古い建物が残っているエリアです。あえて、こういったところで一戸建て住宅を選ぶ人もいるかもしれません。しかし、マンションなど新しい建物を選ぶのならば、長堀通よりも北側です。
周辺の大通りは交通量が多くそれなりに騒音もするので、少し中には入ったところを選ぶのがこういったエリアに住むコツのひとつでしょう。